AMD COVID-19 HPC 基金の成果

2020 年 4 月 15 日に AMD COVID-19 HPC 基金を発表した AMD は、COVID-19 やその他の疾患に関する医学研究を加速することを目的として、演算リソースを研究機関に提供しています。AMD COVID-19 HPC 基金は、COVID-19 に関する研究者の理解を深めるだけでなく、将来的に発生し得る世界規模の衛生や健康上の脅威に対処可能な能力を向上させることを目的としています。

現在、8 ヵ国にわたり 25 を超える機関や組織がこの基金の恩恵を受け、総市場価値は 2,500 万ドル近くまで成長しています。これまでに寄付されたスーパーコンピューターの演算能力は合計 12 ペタフロップに達しています。AMD COVID-19 HPC 基金を通じて寄付された合計演算能力は、世界最速のスーパーコンピューターの 1 つとしてランキングされています。1

寄付の対象となる研究プロジェクトは、COVID-19 ウイルスの進化的モデリングから、コロナウイルスとヒト細胞との最初の相互作用の前に発生するウイルスのスパイク タンパク質活性化の解明、および空中で移動中の COVID-19 液滴の大規模な流体力学シミュレーションに至っています。

このプロセッシング パワーにより、数々の研究機関や組織は複雑な問題を解決し、タイムラインを加速できるようになっただけでなく、ゲノミクス、ワクチン開発、感染科学、モデリングに関連するワークロードにおいて前例がないほどに深いレベルでデータを理解できるようになりました。これにより、最終的により優れたアプローチで、COVID-19 だけでなく、将来的に世界で発生し得る衛生や健康上の脅威に取り組むことができるようになります。

HPC Fund Infographic
AMD 搭載システムを研究者がどのように活用しているのかを知る

参加機関

フェーズ 2 / 2020 年 9 月 14 日発表

Carnegie Mellon University

「AMD が提供するコンピューティング リソースは、Carnegie Mellon 大学計算生物学部の Christopher Langmead 氏と Min Xu 氏の研究を助けてくれるでしょう」と、Carnegie Mellon 大学計算生物学部の責任者である Russell Schwartz 氏は述べています。「Langmead 氏は、COVID-19 を引き起こす SARS-CoV-2 ウイルスや他のコロナ ウイルス種も予防できるように設計されたワクチンの開発に向けて、コロナ ウイルス タンパク質の進化的景観をモデル化しています。一方、Xu 氏は独自に開発した AI 技術を駆使して、Cryo-ET を介して生成された SARS-CoV-2 画像の大規模分析の自動化に取り組んでいます。Cryo-ET は、宿主細胞の細胞内構造とウイルス感染プロセスを研究するための 3D 視覚化ツールです」

- Russell Schwartz 氏、Carnegie Mellon 大学計算生物学部長

Council of Scientific and Industrial Research, Fourth Paradigm Institute, India

「CSIR は、ベンガルールの CSIR Fourth Paradigm Institute でホスト、管理される、インドの COVID-19 研究に特化したスーパーコンピューティング システムを寄付するという AMD の決定を歓迎しています。今回の寄付によって、国の最先端 R&D 組織としての私たちの能力が拡大し、研究コミュニティにおいて世界クラスのハイパフォーマンス コンピューティング施設として成長できるでしょう。

- Shekhar Mande 博士、CSIR 事務局長

­ 「一元化された HPC 施設は、COVID-19 関連の課題に取り組んでいる研究者や学者に安全な演算アクセスを提供できます。ワクチン発見のための生物科学、薬物検査のための化学、効果的な期限を定めたソリューションを提供するエンジニアリングなど、さまざまな分野にわたってインドの科学者たちの仕事が加速するでしょう」

- Vidyadhar Mudkavi 博士、CSIR-4PI 所長

HLRIS Stuttgart

「COVID-19 はユーザーと私たち自身の研究活動に大きな影響を与えています」と、HLRS 最高責任者の Bastian Koller 氏は言います。「私たちは国のスーパーコンピューティング センターとして、COVID-19 との闘いの最前線に立っており、ドイツだけでなくヨーロッパ中の研究者にリソースを提供しています。AMD Radeon Instinct テクノロジの寛大な寄付は、HLRS が COVID-19 と闘うためのシミュレーションを加速するのに役立ちます。今回追加投入されるリソースから実質的な恩恵を受けられるプロジェクトは多いです。現在、スペインのエルチェにある Miguel Hernandez 大学の研究者は、AMD EPYC™ CPU 搭載の HPE Apollo システムである Hawk を使用して、主要な SARS-CoV-2 タンパク質の阻害剤候補を特定するために設計された分子動力学シミュレーションを実行しています。オーストリアのウィーンにある Natural Resources and Life Sciences 大学の別の研究チームは、ウイルスのスパイク タンパク質とヒトの ACE2 受容体の間の相互作用をモデリングしています。結局のところ、これらのプロジェクトは両方とも、有効な薬物化合物をできるだけ早く特定しようと取り組んでいるのです。これらの取り組みに加えて、政府所属の科学者と協力して、疫学シミュレーションに AMD から寄付された製品を使用し、病気の蔓延状況をより正確に理解し、ドイツでの第二波を回避しようとしています」

- Bastian Koller 氏、HLRS 最高責任者

Leibniz Supercomputing Center

「Leibniz Supercomputing Centre (LRZ) では、最先端の IT テクノロジを使用してさまざまな分野で世界クラスの研究者をサポートすることに尽力しています。寛大な AMD の寄付によって、私たちはオーダーメイド医療のための革新的な人工知能ソリューションの分野でパートナーに貢献できるようになります。パートナーたちは COVID-19 に関する当面の研究ニーズに、診断の品質と速度の向上という、はるかに優れた手段で対応できます。私たちは、オーダーメイド医療で使用される HPC と AI をさらに統合するというビジョンの実現に動いています。これが実現すれば、パートナーたちは長期間肺疾患に苦しんでいる患者の治療を大きく進歩させることができます」と、Leibniz Supercomputing Centre of the Bavarian Academy of Sciences and Humanities の所長、Dieter Kranzlmüller 博士は述べています。

- Dieter Kranzlmüller 博士、Leibniz Supercomputing Centre of the Bavarian Academy of Sciences and Humanities 所長

Oregon State University

「オレゴン州立大学のゲノム研究およびバイオ コンピューティング センターは長年にわたって AMD のハードウェアを利用しています。COVID-19 HPC 基金を通じて提供されたサーバーは、ナレッジ グラフによる Monarch Initiative の作業および州内の SARS-CoV-2 変異型をモニタリングするオレゴン州の TRACE プログラムをサポートしました」

- Chris Sullivan 氏、オレゴン州立大学ゲノム研究およびバイオ コンピューティング センター、アシスタント ディレクター

Stanford School of Medicine

「AMD から高性能サーバーを寄付していただいて、大変感謝しています。世界のさまざまな地域で進む COVID-19 の多様な進化形態は、緊急の、地域特異的な、政策関連の多くの疑問を投げかけています。AMD が提供するコンピューティング能力によって、私たちのチームはそのような質問に、より迅速に、より深く、そしてより多くの地域に対して答えることができます」

- Jereremy Goldhaber-Fiebert 博士

Texas State University

「AMD からの非常に寛大な贈り物は、COVID-19 を含む疾患のマッピング、緩和、そして検出に関連する、高いコンピューティング能力を要する条件を満たしてくれます。私たちのチームはまた、テキサス州の健康格差の分析と解決に取り組んでいますが、それに要する関連演算を実行すると私たちの施設の演算能力は飽和状態になってしまいます」と、テキサス州立大学保健管理学部の准教授である Larry Fulton 博士は言います。「AMD は、私たちのビッグ データ問題、つまり既存のコンピューティング能力に対し過度な負荷となるデータに対し、ソリューションのひとつを提供してくれています。AMD が寄付によって支援している分野は、機械学習 (ディープ ビジョンを含む)、地理情報システム、複雑な最適化 (混合整数非線形など)、高度なシミュレーション モデリングなどがあります。AMD が提供してくれたコンピューティング能力は、COVID-19、その他の感染症、そして癌の次の分析ステップを計画するうえですでに役立っています」

- Larry Fulton 博士、 テキサス州立大学保健管理学部准教授

University of Arkansas

「私たちのチームは、割り当てられたリソースを使用して強化された分子動力学シミュレーションを実行し、COVID-19 だけでなく、他の SARS 関連コロナ ウイルスの活性化プロセスを研究しています。AMD は、コロナ ウイルスとヒト細胞との最初の相互作用の前に発生するコロナ ウイルス スパイク タンパク質の活性化を探索するために必要な演算リソースを提供することで、多大な貢献をしてくれています」と Arkansas 大学化学生化学部の助教授、Mahmoud Moradi 氏は述べています。「新しく追加されたコンピューティング能力のおかげで、数十億のシミュレーション フレームに対して、数十万の原子の運動と相互作用をシミュレーションできるようになりました。疾患についてあまり理解が進んでいないこの段階の研究は、COVID-19 用の薬剤とワクチンを設計する、もうひとつのアプローチに私たちを導いてくれるかもしれません」

- Mahmoud Moradi 氏、Arkansas 大学化学生化学部助教授

University of British Columbia

「British Columbia 大学(UBC)の研究者は、COVID-19 に対応するためのさまざまなプロジェクトに従事しており、その多くはハイパフォーマンス コンピューティングへのアクセスを必要としています。彼らは、SARS-CoV-2 への変化を予測する疾患モデリングや AI で強化された治療法発見などの活動を通じて、緊急の健康課題に取り組んでいます。一方で、ほかの研究者たちは、HPC リソースにアクセスして、パンデミックの長期的な社会的経済的影響を研究しています」と UBC の Advanced Research Computing 所長、Steve Cundy 氏は言っています。「AMD からの今回の寄付と支援に非常に感謝しています。AMD は、COVID-19 への世界的な対応に重要な貢献をしている研究者たちが、HPC 能力に迅速にアクセスできるようにするための既存の国家や組織のリソースを補完してくれています」

- Steve Cundy 氏、UBC Advanced Research Computing 所長

UCLA

「UCLA は、AMD からの惜しみない贈り物に感謝しています。おかげで、UCLA の研究が大きく前進するものと思います。当施設には、疫学から治療薬およびワクチンの開発を目指した分子研究に至るまで、COVID-19 の問題にさまざまな角度から取り組んでいる研究グループが多数存在します。これらの研究の多くは、コンピューティング ニーズによって制限されています。この新しい演算能力の追加投入は、UCLA と AMD が共同でプロセッサ テクノロジをコンピューティング研究の新しい分野で活用する機会となるでしょう」と、UCLA-DOE Institute for Genomics and Proteomics 所長の Todd Yeates 教授(生化学)は語っています。

- Todd Yeates 教授(生化学)、UCLA-DOE Institute for Genomics and Proteomics 所長

University of Cambridge

「AMD が提供する新しい HPC システムは、免疫系が新しいコロナ ウイルスにどのように反応するかを学習し、どの患者が重篤な疾患を発症するかを予測するのに役立つバイオマーカーを見つけるのに重要な役割を果たします。この情報は、新しい患者を効果的に管理および治療するために役立ちます。また、COVID-19 を標的とすることができる新薬または既存の薬の研究にも役立ちます。Cambridge 大学は、この重要な研究に対する AMD の寛大な支援に感謝しています」

- John Marioni 博士、Cancer Research UK Cambridge Institute および EMBL の European Bioinformatics Institute のグループリーダー

University of Texas Austin

「AMD の CPU と GPU で、研究者は COVID-19 の研究範囲を拡大すると同時に、適時性を大幅に向上させることができます。これには、ワクチンの改善に役立つウイルス スパイク タンパク質変異の特定から、機械学習技術を使用した研究まで、すべてが含まれます。新生児から高齢者まで、あらゆる年齢の患者の COVID 疾患の重症度を調べることも可能です」

- Alison R. Preston 氏、UT 研究所臨時副所長

University of Toronto

「この新しいパートナーシップは、Toronto 大学が COVID-19 に関する研究を加速し、コミュニティへのパンデミックの影響を緩和するためのイノベーションを開発するのを支援する上で重要です。最先端のコンピューティング リソースの寄付していただいたことで、Toronto 大学とその付属病院は現在のインフラストラクチャを拡張し、治療法、ワクチン、疾患変異の発見を進めるために、個人の健康情報のビッグ データ セットを安全に処理できるプラットフォームである SciNet4Health を立ち上げることができます。今回の寄付で、未来のヘルスケアに一歩近づくことができます」

- Alex Mihailidis 氏、国際パートナーシップ担当アソシエイト副社長

Universita di trento

「AMD が提供してくれたコンピューティング リソースは、遺伝子発現間の因果関係を発見することを目的とした進行中の gene@home プロジェクトに投入されます。特に、Laboratory of Biological Data Mining の医学研究者や学生と協力して、SARS-CoV-2 と相互作用する遺伝子に関する特定の調査をスピードアップする予定です。AMD のイニシアチブは私たちにとって非常にタイムリーであり、さらなる分析方法の実現に向けて前進できると期待しています」と Trento 大学の情報工学およびコンピューター サイエンス学部の Enrico Blanzieri 教授はコメントしています。

- Enrico Blanzieri 教授、Trento 大学情報工学およびコンピューター サイエンス学部

University of Vermont

「COVID-19 は、教員の研究対象に多大な影響を与えました」と Vermont 大学の研究担当副学長である Kirk Dombrowski 氏は述べています。「UVM での研究の多くはハイパフォーマンス コンピューティングを必要とするので、私たちは AMD からの寛大な贈り物に非常に感謝しています。私たちは、幅広い重要なプロジェクトにおいて高い演算能力を使用します。これらのプロジェクトに含まれるのは、SARS-CoV-2 ウイルスのスパイク タンパク質の構造と挙動の分析、COVID-19 の液滴が空気中を移動して疾患を拡大する様子を再現する大規模な流体力学シミュレーションの作成、何十億件ものツイートのリアルタイム分析の実行による単語の使用と確認された COVID-19 症例との相関関係の発見、大学キャンパスでのウイルスの伝染を阻止するための社会的距離を確保する行動と PPE の使用との間の相互作用のモデル化、パンデミック ダイナミクスに関する接触構造、介入、行動間の相互作用の分析などです。これらのプロジェクトの結果は、公衆衛生政策に影響を与え、第二波の防止を支援するというより広い目標に貢献します」

- Kirk Dombrowski 教授、Vermont 大学研究所副所長

Virginia Commonwealth University School of Pharmacy

「AMD の演算能力は、VCU の研究者が AI と質量分析を組み合わせて COVID-19 を含む疾患の新しい治療法を模索する上で、非常に役立つでしょう」と、Virginia Commonwealth 大学薬学部長の Joseph T. DiPiro 氏は語ります。「VCU でのこの画期的な研究に対する AMD の寛大な支援に感謝します」

- Joseph T. DiPiro 氏、Virginia Commonwealth 大学薬学部長

Washington University School of Medicine

「AMD によって提供された新しいサーバーは、Folding@home のプロジェクトをジャンプ スタートするために実行する初期のシミュレーションの時間短縮を促進してくれます。さらに重要なことは、Folding@home から入ってくるすべてのデータをタイムリーに処理する能力を劇的に高め、SARS-CoV-2 への理解を深め、COVID-19 と闘うチャンスを掴める、ということです」

- Greg Bowman 准教授、Washington 大学医学部生化学および分子生物物理学担当および Folding@home ディレクター

フェーズ 2 その他の参加機関 -

  • GENCI/French National High-Performance Computing Agency
  • ボストン小児病院
  • ノースカロライナ A&T 州立大学
  • ハワード大学

フェーズ 1 / 2020 年 6 月 1 日発表

ニューヨーク大学

「AMD から寄付された演算リソースは、プロジェクトでさまざまな分野を担当するニューヨーク大学の研究者たちが、COVID-19 危機に関連する重要な多くの側面に対処するために使用することになります。これには、COVID-19 や将来的な SARS ウイルス変異の治療に役立つ薬剤の発見、膨大な生物医学文献からの関連研究結果の検索、患者のスクリーニングのための医用画像の分析、財政難に反応した政治的態度や投票動向の分析などが含まれます」
 
- Russel Caflisch 氏、NYU Courant Institute of Mathematical Sciences 所長

ライス大学

「AMD からの贈り物は、COVID-19 に計算で戦いを挑んでいるライス大学にとって大きな転換点になるでしょう」「私たちは手段を講じて前に進めていましたが、規模が大きく複雑な機構ともなると、もはや最先端の演算能力の領域です。AMD が最先端のコンピューティング能力を提供してくれたことで、このウイルスに打ち克つための進歩が加速することでしょう」

- Peter Rossky 氏、ライス大学 Wiess School of Natural Sciences 所長

マサチューセッツ工科大学 (MIT)

「私たちは MIT 全体で、モデリング、検査、治療などの直接的な影響を与える分野から、新しい治療法やワクチンの発見などの中長期的な影響を与える分野まで、グローバルな COVID-19 パンデミックに取り組んでいます。これらの研究のほとんどすべてがコンピューティングに関係しており、その多くは今回 AMD が惜しみなく寄付してくれたペタフロップ・マシンのような、ハイパフォーマンス コンピューティングを必要とします」

- Daniel Huttenlocher 氏、MIT Schwarzman College of Computing 所長

脚注
  1. 2021 年 11 月の最新の Top500 リスト (https://www.top500.org/lists/top500/list/2021/11/) に基づいています。