STMicroelectronics、AMD EPYC™ プロセッサでチップ設計の高速化とサステナビリティの強化を実現

コンピューター チップの設計と製造は、世代を重ねるたびに難しさを増しています。トランジスタが小型化するにつれて、その複雑さは飛躍的に増大します。

そのため、製造ワークフローの計算処理性能のニーズには際限がありません。ヨーロッパ最大の半導体企業である STMicroelectronics では、同社のデータセンターで設計プロセスの需要に応えるのに絶えず苦労しています。AMD EPYC™ プロセッサは、同社の 3 つの基準である性能、価格、消費電力をすべて満たし、サステナビリティ目標を堅持しながら、顧客へのチップ設計の提供を格段に速めました。

R&D のパフォーマンスとエネルギー使用の課題

「私たちは年 150 ギガワット時のエネルギー消費を削減して、2027 年までのカーボンニュートラル化を目指しています」と語るのは、STMicroelectronics の DTIT シニア インフラストラクチャ アーキテクト、Olivier Joubert 氏です。「新工場やデータセンターを増やして生産能力を拡大し、ここ数年で 2 桁の成長を遂げた企業にとっては大きな課題ですので、適切なデータセンター サーバー テクノロジを選ぶことがとても重要です」

STMicroelectronics は半導体の設計と製造の両方を手がけており、データセンターの計算処理能力を主な 3 領域で必要としています。各工場にはデータセンターが少なくとも 2 つある一方で、一般的な業務 IT インフラはオンプレミスのデータセンターとクラウドの両方で集中管理されています。ですが、最大の要求元は研究開発 (R&D) のデータセンターです。「半導体トランジスタの大きさを半分にしようとすると、集積度が高まり、データ ストレージと処理能力は 4 倍必要になります」と Joubert 氏は説明します。 

R&D 向けには STMicroelectronics 最大のデータ処理能力がフランスにあります。それ以外の処理能力は、イタリアとインドのデータセンターが提供しています。R&D データセンターの処理能力が強化されれば、STMicroelectronics がより複雑な新チップを設計する能力に実質的なインパクトがもたらされます。ただし、同社の環境目標にさらなる課題が突き付けられることにもなります。「STMicroelectronics の DNA にはサステナビリティが刻まれています」と Joubert 氏は語ります。「当社は創業 36 年になりますが、そのうち 25 年でサステナビリティ レポートを発行しています。消費量を低減するよう努めています」

こうした課題を乗り越えるべく、STMicroelectronics は新しいサーバー テクノロジが登場するたびに、必ず評価を実行しています。「サーバーで最も重視している項目から始めます。それが CPU です」と Joubert 氏は語ります。「ここ 10 年、全 CPU のベンチマークを実施してきました。当社は一貫してコア数最多の最速プロセッサを必要としています。しばらくは、競争がありませんでした。ですが、AMD が 2017 年に EPYC プロセッサを発売したことで、選択肢が戻ってきました。SPEC CPU ベンチマークで好成績を収めたプロセッサは、当社のテスト対象に加わります」AMD EPYC プロセッサの第 2 世代が登場したとき、STMicroelectronics はベンチマークを実施することにしました。その性能は、同社の予想をはるかに上回るものでした。

Manufacture of dies on a silicon carbide wafer
シリコン カーバイド ウェハーでのダイ製造

より優れた性能、コスト、電力効率

「ベンチマークの結果には本当に感心しました」と Joubert 氏は振り返ります。「ですが、当社のオペレーティング システムやアプリケーション スタックのサポート用としては、第 3 世代 AMD EPYC プロセッサを待たなければなりませんでした」STMicroelectronics は当時から AMD EPYC プロセッサを Microsoft Azure Cloud を介して既に使い始めており、現在でも必要に応じてこの形で R&D ワークロードを強化しています。「Microsoft とは密接に協力し、当社のデータセンターと同じ CPU を使ってもらっていました」 

HPE は、サーバーと CPU を STMicroelectronics に提供し、同社のデータセンターでテストしてもらいました。「R&D 用のベンチマークとして実行しているのは電子設計自動化 (EDA) とコンピューター支援設計 (CAD) です」と Joubert 氏は語ります。「第 2 世代の AMD EPYC プロセッサは、販売されていたどの CPU よりも 6% 高いパフォーマンスを示しました。それが第 3 世代の AMD EPYC プロセッサになって 12% に上がりました。シングルソケットの CPU ではコアあたり 25%、デュアルソケットの CPU では 30% 向上しました。電力効率のテストも導入しました。第 3 世代 AMD EPYC は、コアあたりの電力消費を 30% 削減しました。これは 3 条件 (性能、価格、効率) すべてが満たされた初めてのケースでしたので、第 3 世代 AMD EPYC CPU を大量に購入するようになりました」

Aerial view of STMicroelectronics fabs in Crolles, France
フランス、クロルの STMicroelectronics 工場の空撮写真

第 4 世代 AMD EPYC への信頼性の高いロードマップ

STMicroelectronics は R&D データセンターで AMD EPYC プロセッサの導入を開始しました。「R&D から始めたのは、ワークロード需要が最も高いからです」と Joubert 氏は語ります。「パフォーマンスが高いほど、タイム トゥ マーケットが短縮されます。現在では、設計をかなり短期間で完了できるようになりました。以前よりもチップを速く、より多く並行して設計できます」

このことは、自動車の先進運転支援システム (ADAS) や通信ネットワークなど、半導体設計が急速に進化している業界において、特に大きな価値があります。STMicroelectronics では、R&D データセンターのサーバーを 27 ヶ月ごとに順次置き換えており、AMD EPYC を使用する割合が増え続けています。同社はこの年の 5 月末までに、データセンターに 64 コアの第 3 世代 AMD EPYC CPU 搭載のシングルソケット HPE サーバーを 550 台導入し、以後、CPU の数は合計で 1,000 個を上回り、Microsoft Azure 経由でも何千個と使用しています。

また、サステナビリティ目標も達成できました。コア密度の高いサーバー向け CPU によるエネルギー消費の増加は、抜群のパフォーマンスで相殺されています。または、AMD の EPYC CPU と HPE のサーバーは定格動作温度が高めであるため、データセンターの空調を控えめに抑えることができます。「第 3 世代 AMD EPYC プロセッサを使うことで、電力消費量を 33% 削減できました」と Joubert 氏は語ります。また、STMicroelectronics はソフトウェアのライセンスを時間ベースで受けています。AMD EPYC プロセッサの性能が高いおかげで、同じ時間で実行できるジョブ数が増え、コスト削減につながっています。

STMicroelectronics は現在、第 4 世代 AMD EPYC プロセッサのテスト中で、有望な結果が得られています。「第 4 世代 AMD EPYC CPU では、前の世代と比べて少なくとも 25% の性能向上が得られています」と Joubert 氏は語ります。「これは市場に出回っているほかのどの競合製品よりもいい結果です。当社の経験では、第 3 世代 AMD EPYC プロセッサですら、競合他社ではコアあたり 50% も多くの電力が必要で、性能が低いにもかかわらず CPU は 75% も高価でした。ですから、第 4 世代 AMD EPYC はさらに先を行くことになります。AMD EPYC プロセッサについては、当社が評価している点が 4 つあります。1 つ目は、AMD がロードマップを予定どおり達成する能力です。2 つ目は、半導体が不足することなく供給できることです。3 つ目は、AMD がエコシステムと協力して当社のスタックを支援してくれていることです。そして最後の 4 つ目が、当社の推奨パートナーとの連携です。おかげで HPE と Microsoft Azure で同じテクノロジが使われています」こうしたメリットをふまえ、STMicroelectronics は現在、AMD GPU をデータセンター全体に導入することも検討しています。「私たちは市場の CPU に選択肢があることを、そして AMD のようなパートナーを得ていることを、たいへん喜んでいます」

ST employee checking chips with a microscope inside a STMicroelectronics fab
STMicroelectronics の工場内でチップを顕微鏡で検査している ST の従業員

お客様に関する情報


STMicroelectronics は、グローバルな総合半導体メーカー (IDM) として、独自のテクノロジや世界各地の製造拠点へ継続的に投資しています。ヨーロッパを拠点とする同社は、製品の設計と製造、お客様への提供を通じ、お客様が必要とする専門性、供給セキュリティ、品質を提供しています。従業員は 50,000 人を超え、うち 9,000 人以上が研究開発に従事し、顧客企業の数は全世界で 200,000 社以上です。同社は約 30 年にわたり、サステナビリティをあらゆる事業の中心に置いてきました。詳細については、st.com をご覧ください。

ケース スタディに関する情報


  • 業界:
    半導体の設計および製造
  • 課題:
    複雑化し続けるチップ設計に対応しつつ、サステナビリティ目標を満たし続けるような、R&D データセンターのパフォーマンスを実現する
  • ソリューション:
    第 3 世代 AMD EPYC™ プロセッサ搭載の HPE サーバーおよび Microsoft Azure クラウド インスタンスを導入する
  • 結果:
    パフォーマンスが 12% 向上、コアあたりのコストを最大 30% 削減、コアあたりの消費電力を 30% 削減、データセンターの電力消費量を 33% 削減、チップ設計の納期を短縮
  • AMD テクノロジ概要:
    第 3 世代および第 4 世代 AMD EPYC™ CPU
  • テクノロジ パートナー:
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