TSMC、AMD で半導体ファブの拡大を実現
第 4 世代 AMD EPYC プロセッサを導入して、より少ないサーバー台数でコストパフォーマンスを向上
TSMC は現在、世界トップの半導体ウェハー ファウンドリですが、さらなる成長に向けて大胆な計画を立てています。その計画実現には、生産、研究、開発、一般的な IT インフラを実行するために、より多くの演算能力が必要になります。AMD EPYC™ プロセッサはこれまでも TSMC にとって重要な役割を果たしていましたが、第 4 世代 AMD EPYC CPU は、TSMC がその成長目標を達成するために必要な能力をさらに向上させました。
TSMC のインフラおよび通信サービス事業ディレクターである Simon Wang 氏は、次のように述べています。「TSMC は非常に早いスピードで事業を拡大しています。私たちはグローバルな製造拠点を拡大しており、新たなファブ施設を台湾、日本、ドイツ、米国に建設中です。そのため、今後ファブでの製造、研究開発シミュレーション、事業運営に、大規模な演算能力が必要になってきます」
TSMC は、アップグレードしたインフラ向けに、消費電力を抑えつつ演算性能を最大化する必要がありました。Wang 氏はこう述べています。「私たちはサーバーとストレージを検討する際、消費電力あたりの演算性能、必要となるスペース、コストに注目します。当社のワークロードは主に次の 3 つのカテゴリに分類されます。1 つ目はファブでの自動製造です。2 つ目は、シミュレーションと設計を含む研究開発で、Cadence 社と Synopsys 社の電子設計自動化を活用しています。マスク作成にも多くの演算能力が必要ですし、経路探索も同様です。また、次世代製品に向けて新しい素材や新しいテクノロジも探しています。3 つ目のカテゴリは事業運営で、受注や人事、法務部門などの支援が含まれます」

3 タイプのワークロード全体で TSMC を支援
Wang 氏は、次のようにも述べています。「当社のファブ オートメーションの大部分は CPU ベースで、仮想マシンまたは Kubernetes が稼働する Linux プラットフォームを使用しています。これを支えるのは大容量のストレージです。研究開発には、GPU 搭載の CPU を使用します。3 つ目のカテゴリの事業運営では、ほかの 2 つのカテゴリと比べるとその数は少なくなります。その理由は、そのカテゴリのシステムは当社のサポート部門が使用するもので、主に CPU サーバーが使われているからです」
TSMC は AMD EPYC プロセッサ群の製造パートナーではありますが、社内規制により、Wang 氏は今後発売される AMD 製品について特別な知識は持っていないとのことでした。それでも同氏は、前世代の製品については非常に好意的でした。Wang 氏は、ロードマップの情報を台湾の AMD 支社長から得ていましたが、それでもなお、この新しい世代の CPU が TSMC の要件に適うものであるという確証を必要としていました。「IT 部門には、当社の製品が優れたものであることを証明するという責任もあります。TSMC が製造する AMD の最新のプロセッサが、前世代よりも低い消費電力で高い性能を発揮することを証明する必要がありました」
Wang 氏はこう続けます。「IT 部門はまず、ワークロードに基づいて私たちが必要とするコンフィギュレーションを定義します。CPU、クロック レート、メモリ、ソリッドステート ドライブ (SSD) の仕様を定義します。毎年、5 つから 7 つのモデルを定義して、ベンダーに送り、フィードバックを求めます。最終的なベンダーを決めるのは、オープンな入札プロセスです。私たちはベンダーにとらわれません。価格設定、性能、電力効率に基づいてベンダーを決定しています」

AMD EPYC CPU でコストパフォーマンスを向上
「第 4 世代 AMD EPYC の導入にあたり、私たちは 2 つのオプションを検討しました。多くのコア数でのシングルソケット CPU と、それぞれのコア数は少ないが全体的な総コア数は同じデュアル CPU です。この 2 パターンのコンフィギュレーションのコスト パフォーマンスを検証しました。当初私たちは、コア数が少ない CPU が 2 つの方が良い結果を出すと考えていましたが、実際は、より多くのコア数のシングル ソケットの方が良かったのです」と Wang 氏は述べています。
また、Wang 氏はこのように説明します。「性能検証では、市場で入手可能な一般的なツールを使用します。それに加えて、社内のプリプロダクション環境も使用して、ワークロードがどのように実行されるのかと、その応答速度を確認します。これを、当社のファブでの製造と、さらに研究開発設計センターでもテストしました。性能と消費電力の検証に加えて、サーバーの操作性も検証します。これには自動プロビジョニングが含まれるため、ベンダーとの共同作業になります」
Wang 氏は、このように述べています。「第 4 世代 AMD EPYC CPU は、前世代と比べて 30% 以上のコスト パフォーマンス向上を実現しました。ファブでの製造とオートメーションで、移行は非常に簡単に完了できました。IT 部門でも切り替えはスムーズにいきました。多くの時間を要した唯一の作業は、研究開発でのマスク作成でした。その理由は、このプロセスには非常に高度な精度が要求されるからですが、最終的には、チームは AMD の CPU を認定しました」
Wang 氏はこう続けます。「今年の 1 月、私たちは昨年購入した CPU の合計数と今年の計画について検討していました。そこで気づいたのは、第 4 世代 AMD EPYC CPU を導入すれば、購入するサーバー数を削減しながら、演算性能を 30 ~ 40% 向上させることができるということでした。つまり、この移行は必ずやらなければならないことだったのです」。サーバーあたりのパフォーマンス向上はまた、TSMC がデータセンターの設置スペースを節約しながらも同等のパフォーマンスを実現できることを意味していました。

高性能、低コスト、低消費電力
消費電力もまた、高密度なサーバーのおかげで削減できました。「演算性能は、消費電力あたり 10 ~ 20% 向上しました。CPU あたりのコア数が多く、より多くのメモリに対応できる点が、AMD プロセッサの優れた特徴です。ソケットあたりのコスト パフォーマンスも向上しています。同じコア数では、シングル ソケットの方が約 10% 高いパフォーマンスを発揮し、コストも削減できることが分かりました。私たちが実際に得た数値では、第 4 世代 AMD EPYC プロセッサ使用時の電力効率は 30% 以上向上しています。TSMC の最先端ファブでは、現在ワークロードの 90% 以上が第 4 世代 AMD EPYC CPU で実行されています。TSMC の IT 部門には現在、3 つのワークロード領域全体で 2 万台近くの AMD EPYC CPU 搭載サーバーがあり、うち 6,600 台が第 4 世代 AMD EPYC CPU を搭載済みです」と Wang 氏は述べています。
TSMC は、第 4 世代 AMD EPYC 9124 および 9354P プロセッサを Kubernetes 汎用ワーカー ノードに、9254 を Kubernetes データベース ノードに、9254 もしくは 9454P を Cassandra ノードに使用しています。Wang 氏は、「私たちは今後も AMD の CPU を当社のデータセンターに導入していきますが、それは、これまでの経験で、AMD の CPU がコスト、パフォーマンス、消費電力あたりの演算能力の面でほかより勝っていることを知っているからです。現在、購入している X86 サーバーは、その 90% 以上で第 4 世代 AMD EPYC CPU が使用されています。今後も引き続き、AMD の次世代製品に注目していきます」と述べています。
また、Wang 氏はこう続けます。「TSMC の IT 部門のポリシーとして常に心がけていることが、データセンターのパフォーマンスを強化するために最新の製品を使用する、ということです。AMD 製品は、コア密度の高さと大容量メモリ対応の点で、クラウド ネイティブ環境に最適です。マルチテナント、マルチタスク環境にも理想的です。コストも高くありません」
そして Wang 氏はこう締めくくります。「私たちの AMD とのコラボレーション パートナーシップは非常に円滑なものです。そこから生まれる製品は当社のパフォーマンス要件とコスト要件を十分に満たしています。私たちは AMD の最新の GPU を楽しみにしています。速度とパフォーマンスが向上した Instinct MI300X もその一つです。それらがあれば、さらに多くのワークロードに AMD テクノロジを導入することが可能になります」

お客様に関する情報
1987 年に設立され、半導体のファウンドリ専業企業の先駆けとなった TSMC は、そのビジネス モデルにおいて世界をけん引する企業でありつづけています。業界トップクラスの、デザイン イネーブルメント ソリューションのプロセス テクノロジとポートフォリオにより、世界中の顧客やパートナーからなるエコシステムの発展を支援し、半導体業界全体でイノベーションを促進しています。アジア、欧州、北米にまたがるグローバルな事業展開により、世界各地で献身的な企業市民としての責任を果たしています。専門的かつ最先端のパッケージング テクノロジ サービスを幅広く提供することにより、2023 年には 288 種類の異なるプロセス テクノロジを展開し、528 社の顧客向けに 11,895 点の製品を製造しました。同社は台湾の新竹に本社を置いています。詳細については、tsmc.com をご覧ください。
